白クマさんの書評部屋

書評・映画の感想のブログです。客観的な批評はできないので、「素晴らしい。全て間違ってる」と思って読んでください。

ローグ・ワン前日譚のドラマの新キャストが発表

https://www.starwarsnewsnet.com/2020/04/the-untitled-cassian-andor-series-adds-two-new-cast-members.html

 

↑ソース

以前から、来年に放送されると報じられていたローグ・ワンの前日譚。

コロナの影響で撮影が延期になったそうですが、来年という放送時期が変更になったというニュースは聞きません。

 

さて、その新キャストですが、一人はローグ・ワンでモン・モスマを演じた方で、今回も同役。

 

もう一人はデニース・ゴフという方だそうです。

 

40歳の女性の方ですが、自分は存じ上げませんでした…。

 

既に確定していると報じられている情報はキャシアン・アンドーとK-2SOの登場。

 

ショー・ランナーはトニー・ギルロイ

ローグ・ワンの大規模な再撮影に参加し、事実上の監督をされた方です。

何話かの監督もされるそうですね。

以前「スターウォーズに関心はなかった」と発言されていました。

しかし、トニー・ギルロイさんはマット・デイモンのスパイ映画シリーズであるボーン・シリーズで一躍名を上げた方。

スパイ・アクションの経験値は豊富。

これは期待できそうですね!

 

 

【フォースの覚醒が切り落とした物】小説 ブラッド・ライン 【感想】

クラウディア・グレイ著

"「エピソード7」の6年前――レジスタンス結成までの政争と混迷

リーダーシップを欠き混迷する新共和国。敵対する二大政党に属すレイア・オーガナ議員とランサム・カスタルフォ議員は、ある犯罪カルテルの実態調査のため協力することになるが、テロ事件に巻き込まれ――!"

 

はい。

ネタバレなしです。

 

スターウォーズの小説です。

簡単に説明するとジェダイの帰還とフォースの覚醒の間の話です。

フォースの覚醒では冒頭から刺激的な一文、刺激的なシーンから始まりましたね。

ルーク・スカイウォーカーが消えた・ファースト・オーダーが台頭した」

映画プライベート・ライアンをオマージュした、輸送される最中のストームトルーパーのカット。十字のセーバーを持った謎の悪役。そして無辜の村人の虐殺。

時系列的な前作のラストシーンで築かれた平和は跡形もなく消え去り、まるで秩序は崩壊してしまっているということが視覚的にも伝わってくる、アドレナリン全開な場面だった。

 

まぁ引き込まれますよね。

 

しかし自分の最大の関心事は、「EP6との間に政治的に何があったのか?」ということ。

もちろん旧作のキャラクターたちにも関心はありましたよ。

でもEP7製作決定と聞いたときに1番興味を引いたののは「EP6で完結した物語にどのように新しい章を追加するのだろう?どのように蛇足に見えない、違和感のない新作を構築するのだろう?」

ということ。

だから1番関心があったのは世界観なんですね。

 

別に政治劇自体はあんまり見たいとは思わなかった 笑

これは個人の嗜好の問題です。SWで政治劇をやるべきではないと思っているわけではありません。

 

ただ本当に「それをやるな」と要求するネット上のムーブメントが盛り上がり、JJがそれに応えた、という事実もあったのですが…。

("スターウォーズを再び偉大にするための四つのルール")

 

で、EP7はその関心に満足のいく答えを出してくれたかというと…

うん。そうではなかった笑

新共和国の政治の中枢であろう首都がある惑星はほとんど描かれず、中盤でスターキラー基地の攻撃で粉砕されます。

キャラクターに何があったのかは、断片的には明らかになったのですが、政治的な情勢についての説明はほぼなかった。

 

それが描かれているのが、このスピンオフ小説「ブラッド・ライン」です。

スターキラー基地の攻撃を恐怖に歪んだ表情で見上げていた、元老院の施設にいた女性の一人も脇役として登場します。

(コー・セラ)

 

まぁ、ファンなら勧められなくても読んじゃう内容ですよね。

 

主人公はレイア。

彼女はくだらない揚げ足取りばかり行っている元老院の議員たちにうんざりしている。政治の世界から身を引きたいと思っています。

そして新キャラクターのランソム・カスタルフォ。

彼は議員で、また理想主義者で、帝国のシステムを賛美し、その遺物をオフィスに飾っているような男です。

そんな水と油のような関係の二人がタッグを組み、犯罪組織の調査をすることになる、というストーリーです。

そこまで規模の大きくない問題である、事の発端。しかしそれは後のEP7に繋がる、巨大な陰謀が背後にあった…。

 

ポリティカル・サスペンスといった体のエンタメ作品です。

 

小説自体の面白さは、まぁまぁといったところでしょうか。

実のことを告白すると、自分はこの本を積読状態にしていました 笑

情けない話ですが 笑

 

個人的にはレイアというキャラクターにあんまり関心が持てませんでした。

もちろんレイアとハンの結婚生活を知りたいという方が多数であり、その期待に存分に応えているのですが、自分としてはあんまり興味がなかったかな。

 

現状に失望して、どこか情熱的な部分が薄れてしまった彼女は、あの物語の続編として、時間経過を考えれば地に足のついた描き方といえるでしょう。

 

まぁ現実ってそういうもの。。。

 

ランソム・カスタルフォさんもまぁ、よくいるキャラクターですよね。上に書き出した通りでは。

むしろスターウォーズの世界の政治家って情熱を秘めた理想主義者か冷酷で狡猾な戦略家ばかりじゃないか?!

そんなことはないか。

 

それと冒険の主人公パーティとして、ジョフ・シーストライカーというXウィングのパイロットとグリーア・ソネルという若い視点の脇役がいます。

 

前者は血気盛んな若者。正義感が強いが身の程知らずな一面もある。

ポー・ダメロンとよく似ています。

レイアが手を焼くところも似ている 笑

 

後者は落ち着いた女の子です。ミラー・ブライトという主人公パーティが登場する船の操縦を担います。

ハン・ソロとの関わりがあります。ハンの他者への向き合い方を本人以外の視線で語るキャラクターですね。

ネタバレを避けますが、この小説の読後も、その後が気になるキャラですよ。

 

【余談 少し面白いのが、ジョフは惑星"ガタレンタ"の出身なのですが、これってEP8に登場するホルド提督の出身地なのですね。

本編でホルドが現実世界の宗教的な概念がもとになっている言葉を口にする場面が印象的でしたが(以前のSW映画でもところどころ見られた)、それに違和感を持つ人もいました。

映画に連なる小説ではガタレンタについて情報が開示されることによって、それの補完になっている。

こういうところが面白いし収集欲を煽りますよね。憎めないなぁ 笑】

 

この二人視点のサブのお話も閑話休題的に挟まります。

四人とも上巻はあまり興味深いキャラクターではなく、あくまで映画を補完するための物語かな、という印象が強かったのですが、下巻のあたりでは興味深い変化が起こります。

彼らの続きが知りたいと思わされる物でした。(正直、グリーアとジョフの関係性に限って言えば消化不足とと言えるかもしれない)

 

あくまでファン向けが「ここが知りたかった!」という部分を気持ちよく教えてくれる小説、という印象ですね。

物語単体としてはポリティカル・サスペンスなのでわりと人を選ぶんじゃないかなと思います。

そこまで期待しすぎない方がいいかも。

 

ただ、問いたいのは 笑 こういった情勢の説明をEP7でほとんど触れなかったのは果たして正解だったのか?!ということです。

 

もちろん商業的には大成功なんでしょうが。

それにプリクエルというデータがあり、マーケティングして物語に何を組み込むか取捨選択した結果なんでしょうね。

 

でも正直にいって、EP7を見たときには「この世界はどうしてこうなってしまったの…?」と風の谷のナウシカのキャッチコピーと同じ文句が頭を駆け巡り、それが最後まで解消されなかった。

 

EP8も、その話はもう7で説明したでしょと言わんばかりの内容だった。

だからあんまり入り込めなかったんですよねー。

この小説を当時は積んでいたので、背景も詳しくは知らなかったし。

個人的には、スポーツ年鑑を盗まれて改変された2015年に迷い込んだマーティの気分だったよ。

 

そんなふうにフォースの覚醒が切り落とした物、企業の戦略にとって必要がないと判断された物語が開陳されるのが、このブラッドラインです。

 

自分と同じ疑問を抱えている方はぜひ読んでください。

 

 

 

 

スカイウォーカーの夜明けは"スマホ時代"に適応した傑作

スマホ時代の物語


最近、というか結構前からの悩みです。

自分は物語が大好きなので、海外ドラマも観てみたいという想いがあります。


そこで"ブレイキング・バッド"や"ストレンジャー・シングス"等の超有名タイトルを再生してみたんですよね。


当然面白いのだろうという期待を抱えて…。


スマートフォンで、寝っ転がりながら。


結論からいうと、1話の段階でかなり厳しい。笑


物語にあんまり没入できないんですよ。


映画であったら味わい深くなるであろう、"静の演出"がテンポが悪く感じて…。


後者はなんとか4話ぐらいまで見たんですけど、何話かの冒頭の、子供が失踪したお母さんのキャラクターと警察官の中年男性のキャラクターが話をしている場面。これってそこまで情報量が多い、物語を進展させる場面ではないのに、かなり長く感じて、途中で投げ出してしまいした。


これって物語に欠陥があるわけではなく、自分の集中力、スマートフォンという媒体、家という環境の問題だと思います。


こういった話をほぼ聞かないので、自分だけなのでしょうか?笑


思えば、連続テレビシリーズという媒体で最後に夢中になって全話イッキ見したのは、リアルタイムではないですが、コードギアス(一期)でしたね。


あれは展開が速かったしキャラクターも魅力的で面白かった。


ギアスが大変面白かったので同時期に、あの時代でスタッフが共通しているアニメを観てみました。


"ガンダムSEED" "鋼の錬金術師"


ギアス二期も含めて、数話でやめてしまいした。


これも物語が悪いわけではないんですよね。


スマホと家という条件が重なると、よっぽど展開が早い物語ではないと、テンポが悪く感じて、関心がそれて、観続ける気が失せてしまう。


"悪の教典"という過去にブームになった小説がありましたね。
共感能力の欠落した猟奇殺人者の高校教師が主人公の物語です。


著者の貴志祐介先生は、実際に現代の高校に取材に行かれて、「現代の子供たちは多い情報量をテンポ早く与えられることに慣れているので、従来の授業では退屈に感じてしまう」ということを実感されたそうです。


また、数年前空前の大ヒットを巻き起こした"君の名は。"の監督、新海誠さんは、「スマホ時代の子供たちに向けて設計した」ということをインタビューで述べていました。
どのように観客の感情の起伏を操るか、そういったレベルから計算しているのを物語の構造を分解した図に表していたのが印象的でした。


自分はバトルロワイヤルというより、悪の教典のブームに近い世代なのですが、読書が趣味というわけではない、むしろ嫌ってそうな(超偏見)野球少年二名が、あの小説に熱中し、何回も読み直しているのをこの目で見ました。
貴志先生が当代随一の優れたストーリーテラーなのもあるでしょうが、その取材の成果を登場人物のリアリティのみならず、話自体の語り口に活かしたのかもしれませんね。


やはり、大衆向けの娯楽作品において、"スマホ時代の物語"という戦略的変化が求められている現状はあると思います。


現実的に、そういった物語がダイレクトにヒットしている。


さて、スターウォーズの話です。


"スカイウォーカーの夜明け"もまさにそういう"側面"があった映画でした。
(余談ですがJJエイブラムス監督は君の名は。を見たそうです)


冒頭から"死者の口が開いた!"と驚愕の新情報を提示。三回連続ハイパージャンプがまさにこの映画のテーマの一つを視覚的に説明しているかのように、その息もつかせぬスピードとテンションを維持したまま物語は進行する。
全体的に「ピンチになった!いや解決法があった!」という展開の繰り返しで、独特のドライブ感があるんですよね。
普通の映画ならせいぜい三回ぐらいであろう大きな話の転換点が何回もあるイメージ。
テンポの早さのおかげで、飽きるタイミングがない。
いつ見ても何かしらのイベントに登場人物が翻弄されている。
いつ見てもフィンはレイを求めて叫んでいる(大袈裟)。


これぞまさに"スマホ時代の物語"である。

 


美化せずに言えば…。

 


 ̶忖̶度̶抜̶き̶で̶率̶直̶に̶言̶え̶ば̶


いや、あえて物事に闇の側面を見出すとすれば…


ソードマスターヤマトだわな。


ソードマスターヤマト スターウォーズ編だわな。

 


はい、悪く言わないでください。


自分はこの映画を愛しているのです(涙)


レイさんとポーが喧嘩する場面とかすごく好きなんですよねー。


□作風の本質 


さて、個人的にここで取り上げたいのは、"この"作風がいかにして出来上がったのか?ということです。


よくネットで目にするのが、"最後のジェダイが話を進めなかったからテンポが異様に速くなった"という論調です。


前作の"最後のジェダイ"においては作中の経過時間が短く、大局的な変化が起きなかった、EP7からのバトンを無視し、それを埋め合わせなければならなくなったので、急ピッチで話を進めることになったと。


果たして本当にそうなのでしょうか?


先ほども書きましたが、今回の1番の特徴、物語の中で時間を使うものは、小気味良い「ピンチになった!解決法があった!」の繰り返しです。
繰り返しって詩のようですよね、、、素敵ですよね、、、。


しかし、それってEP9内で閉じている要素だと思うのです。
サーガとして見たとき、全体のストーリーにとって必要な物を急ピッチで投下して説明しているかというとそうではない。
作品内で興味を惹くための要素、全体のストーリーを完結させるという役割(JJエイブラムス監督はEP9はシークエルの完結編というだけではなく9本の映画の完結編であると言っていた)にとっては関係ない物を早いスピードで投下し続けている、と言えるのではないでしょうか。


だから、個人的にはこういう作風になったのは、EP8の影響という消極的な理由ではなく、積極的なクリエイティブ面での判断なのではないかと思います。


もっと落ち着いたトーンにすることも可能であったが、野心を持ち挑戦する。


そんな気概がこの現代的な意匠が全面的に漂う素晴らしい映画を生み出したのではないでしょうか。


JJの敏腕映像作家、エンタメ仕掛け人としての慧眼、センスにはとても感心させられましたね。


良い体験をさせてもらいました。